福岡地方裁判所小倉支部 昭和43年(ワ)809号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕原告和成は、第一二胸椎圧迫脱臼骨折、脊髄損傷等の傷害を受け、腰部以下の下半身は完全に麻痺して全知覚を脱失し、下肢各関節の自動運動が不能で、性生活および自力による起立歩行が全く不可能となり、膀胱、直腸障害があり、糞尿排泄も不随意失禁状態であり、麻痺領域に幻覚肢痛があり、以上の症状は永続性のもので、今後治癒または軽快の見込みはなく、後遺症として固定化し、排泄、入浴その他日常生活を営む上に生涯介護を要する。また、右臀部に褥創があり、毎日ガーゼ交換を要する。そして、膀胱直腸障害による尿路感染を防ぐため長期間にわたり定期検診、治療を受けなければならない状態である。
<証拠>によれば原告和成は、昭和四二年八月退院後二〇年間にわたり、下半身完全麻痺により車椅子を必要とすることになつたが、その単価は金三万二、〇〇〇円、耐用年数は四年間であることを認めることができるから、原告和成が右期間中に支出すべき車椅子代から、ホフマン式計算により年五分の中間利息を控除して本事故当時の現価に引き直すと、金一一万〇、六九七円となる。
定期検診費用
金一二六万〇、八二四円
<証拠>によると、原告和成は、昭和四四年一一月(同原告は右臀部褥創の悪化により昭和四四年四月再入院し、同年八月退院の予定であるが、同年一〇月までは健康保険を利用できる。)以降少くとも一五年間毎月一回の定期検診を要するが、右検診費用(交通費も含む。)は一回金一万一、〇〇〇円を下らないことを認めることができるから、原告和成が右期間中に支出すべき検診費用から、新ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して本件事故当時の現価に引き直すと、金一二六万〇、八二四円となる。
家屋増改築費 金四〇万円
<証拠>によれば、被告和成は、昭和四二年八月頃代金六一万一、六七〇円を支払つて自宅を増改築したことが認められるが、さらに右証拠によれば、原告和成が本件事故による傷害のため車椅子の使用を余儀なくされ、その使用に必要な改築のための費用は金四〇万円であつたものと認める。
附添看護料 金四八七万七、七五一円
前記認定のとおり、原告は、毎日排泄、入浴等日常生活を営む上の介護およびその右臀部褥創のガーゼ交換等の世話を要するから、職業附添看護人の雇入れ、またはこれに代るべき妻である原告菊代ら近親者の附添看護を要することとなるものと認められるので、原告は、附添看護料の支払または家人の労務という損害を被るものというべきところ、<証拠>によれば、原告は、昭和四四年四月再入院し、同年八月退院の予定で、その間原告の母が附添看護し、その後少くとも昭和六二年三月まで附添看護を要するものであり、その附添看護料または家人の労務は毎月金三万六、九〇〇円相当であると認められる。したがつて、以上の原告和成の要する附添看護料から、新ホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して本件事故当時の現価に引き直すと、金四八七万七、七五一円となる。
慰藉料 金一五〇万円
<証拠>によれば、原告菊代は、原告和成と婚姻後、小学校教員として共稼ぎをしながら、長男正己(昭和三一年九月二二日生)、次男英幸(昭和三三年七月九日生)、長女美恵子(昭和三九年七月一二日生)を儲け、家庭生活を築いてきたが、夫である原告和成が本件事故により前記重傷を受け、重大な後遺症を残し、加えて子供達の世話を犠牲にしてでも、原告和成の右臀部褥創のガーゼ交換、夜中の排泄物の処置等日常の介護もしなければならず、また同原告との性生活は全く不可能であることが認められ、右精神的苦痛は原告和成が生命を害された場合に比肩すべきものというべきであるから、これに対する原告菊代の慰藉料は、金一五〇万円をもつて相当とする。
(矢頭直哉 弘重一明 村田達生)